2014年4月ころから箱根大涌谷付近で地震が増え、噴気活動も活発になってきました。その後、5月のはじめには噴火警戒レベルが引き上げられ、大涌谷周辺への立ち入りが制限され、6月29日にはごく小さな噴火が発生しました。
この小噴火では、ごく狭い範囲に火山灰が降り、熱泥流などが発生しました。噴火の翌日には大涌谷の中に小さな火口が形成されているのが確認されました。
箱根ジオパークと伊豆半島ジオパークが作った以下の動画でこの小火口の様子などがよくわかります。
噴火口の様子を見たいのですが、大涌谷の中には立ち入りできません。なので大涌谷の対岸から望遠カメラで眺めることにしました。↓は1秒間隔で撮影した写真をつないだタイムラプス動画です。
うん。噴気がもくもくしていて地形がよく見えません。
でも、しばらく眺めていると風向きの変化などに伴って噴気の方向が変わり、ちらちらの地形が見えるタイミングがあります。たくさん写真を撮って地面が見えている部分だけをつなぎ合わせていけば噴気を消した写真を作ることができそうです。
この日の大涌谷の噴気は白色なので、たくさんの写真を撮って暗い部分だけ採用して合成していけばよさそうです。写真を比較して暗い部分を合成する方法は「比較暗合成」というやつで、Photoshopなどいろんなソフトでできます。
比較暗合成用の写真ですが、1秒間隔で写真を撮ると、三脚で固定しているはいえかなりの望遠ですのでミラーショックで少しだけぶれてしまいました。そこで4秒間隔で約16分、471枚の写真を撮影しました。この写真すべてを比較暗合成してできたのが以下の写真。2015年6月噴火で生じた小火口(写真中央付近)も良く見えるようになりました。
もともとの写真は以下のような感じです。噴気で何も見えません。
比較暗合成写真で、噴気もくもくの状態に比べて地形がよく見えるようになりました。このままでもよいのですが、写真の暗いところをつないでいるため雲影などを拾ってしまい全体に暗くなりすぎていますので、明るさと色調を少しいじって見やすくしました。
この写真に温泉地学研究所の報告などを参考に2015年噴火の火口や蒸気井の名称を書き入れると以下のような感じです。
わりと手軽な方法で噴気を(それなりに)消した写真を作ることができました。すごいセンサーとかで噴気の向こう側を透過するようなことはできるかもしれませんが、簡便にできるというのも大切なことです。
この方法のよいところは、三脚にのせたカメラを動かさずにインターバル写真を撮るだけで噴気の影響をある程度排した写真が作れるところです。もっとも、風が無かったり風向きが一定だったりして噴気が全く動かないとどうしようもないですが。
この文書は2015年8月頃に別の場所に書いたものを、2024年6月にこのサイトに引っ越したものです。