貴僧坊水神社点描

修善寺駅から車で30分ほどの場所に貴僧坊という集落があります。近くには萬城の滝や筏場のわさび田などがある、静かな山里です。集落内にある貴僧坊水神社は水の神様であるミズハノメを祀る小さな神社です。

本殿のすぐ横には天城山の溶岩流から湧き出す湧水があり、湧き出した水はそのままわさび田に引き入れられています。水を汲みに来る方もいるそうです。静かな境内と周囲の森、小さく聞こえる水の音、しっとりとした雰囲気がステキな場所です。

2023年の10月から11月にかけて貴僧坊を会場として「Cliff Edge Project うぶすなの水文学」という展覧会が行われ、その中のトークイベントの登壇者に呼んでいただきました。早めに行って展示を堪能した後に、以前も使った手持ちSLAMで水神社の様子を点群としてアーカイブしました。

こちらのサイトで点群をプレビューできるようにしました。もしデータが欲しい方がいましたらここからlas形式の点群データをダウンロードできます。自己責任でご自由にお使いください。なお、カメラはついていない機材ですので自然色の着色はできません。RGBには高さ色分けを入れてあります。

GNSS無しのSLAMですので計測距離が長かったり高低差があったりするとうまくいかないことがあります。貴僧坊水神社くらいの広さなら1回でも計測できそうではありましたが、神社入り口から本殿前、わさび田、庁屋の裏手の3回に分けて計測しました。それでも段差を超える際のゆれなどの影響で変な点群が生成されている場所もありますし、壁面などで確認すると15cm程度の厚みになっています。まあ、SLAMなので仕方ないです。

計測した3つのデータをマージした後、VIRTUAL SHIZUOKA点群データから座標を拾って位置合わせしました。建物はある場所だったので建物の屋根の角などが使えました。

SLAMで欲張って広い範囲を1回で測ると全体が歪んだりしてしまいますし誤差も蓄積されていきますが、今回は静岡点群とそれなりにきれいに重なってくれてよかった。


今回はCliff Edge Projectの展示期間中に計測しましたので、本殿横の庁屋内に展示されていた絵画の形状も計測されています。potreeは便利で点群をclipして表示できますので、庁屋の屋根を非表示にすると大胆に配置された絵画の様子もわかったりします。

「生々流転・ミズハノメミコト図(漆原夏樹さん、千賀基央さん)」

左側にある「Clipping」というメニューから「Volume clip」ツールで範囲を指定して、「inside」にすると囲った範囲の点群だけを表示することができます。樹径計測したり枝の張り方を確認したりなど、樹木の様子を見たりする際にも便利です。

あと、点群の表示を反射強度(intensity)にすると展示された絵画がちょっとだけ見えますね。

potreeで反射強度を見るには「Scene」→「Objects」から「Point Clouds」の中にある「kisobo_20231021」を選んで、「Attribute」のドロップダウンから「intensity」に。あとは見やすくなるようRangeとかガンマを調整するといいと思います。


使った機材
  • 機材は株式会社STORY所有
  • 現地作業時間:約20分(計測3回)
  • 後処理(データのマージ+位置合わせ):3時間くらい
  • ノイズ除去:2時間くらいやって嫌になった

この文章は2023年10月に書きました。