SLAMという便利な道具があります。移動体(車とか手持ちとか)からレーザーや映像で周囲の測量をしながら自分の場所もリアルタイムに推定、マッピングしていくというもので、GNSSなどを使わなくても空間を測ることができます。車の自動操縦などの分野で注目されていますが、もちろん地図作りにも使うことができます。
SLAMにもいろいろありますが、KAARTA社のStencil2というキカイをお借りしましたので、ちょっと試してみました。LiDAR SLAMとVisual SLAMを組み合わせた機械です。
SLAMは非常に手軽に点群データを作ることができますが、GNSSなどの外部データを参照しない機種の場合は地理座標がつきません。そのため、他のデータと重ね合わせたり、差分を取ったりということができないのです。そこで、現場で測量を行って何点かの基準点を設置し、その基準点を使って点群の位置合わせをしたりします。でも、せっかくSLAMではお手軽に計測作業が行えるのに、基準点設置に時間や労力がかかるのは嫌です。できるだけ楽したい。
そこで、静岡県が公開している点群データを使ってSLAMで取得した点群の位置合わせをしてみました。
今回のおためしでは3分程度の計測で0.8ha程度のDEMを作りました。SLAMを持って数100mを歩いただけです。現地作業は準備を含めて10分未満。既存の崩壊土砂の移動状況もある程度定量できるくらいの成果は得られたように思います。
例えば数10mオーダーの崖崩れなどを測るような場合にはSLAMはとても良いと思います。静岡県のように公開された事前データがあれば現地作業を最低限にできるので危険な災害現場で基準点設置したりしなくても済みます。
もちろん、点群どうしで位置合わせをするのが難しい場所もあります。今回は道路の近くでしたので人口構造物も多く、それら構造物を使って位置合わせをしました。一方で、山の中など人工物が無い場合は、対応点を見つけるのが難しいかもしれません。いい感じの岩とかを使える可能性はありますが。あと、静岡県の点群が取得されてから時間がたっていると、構造物などが作り直されたりして位置合わせができなくなったりしそうですね。
この文章は2022年6月に書きました